旅立ち

春は旅立ちの季節だ。学び舎を旅立って希望に燃えて社会に飛び出す若者も、大きいランドセルをしょってかしょわれてかして小学校の門をくぐるのも親からの旅立ちだ。そんな旅立ちはいいけれど、連れ立って遠いところに旅立ってしまったバンド仲間が二人もいる。

一人は高校の後輩で彼のお姉さんが私の同級生。キレのいいドラミングのとても楽しい奴だった。一年ほど前にがんに侵され一時は余命いくばくもないと診断されたほどだったようだ。最近保険認可されたばかりのキイトルーダという薬が処方され奇跡的な効果を発揮したという。キイトルーダは免疫保護剤でノーベル賞の本庶佑さんのニポルマブと同様の薬らしい。ところが秋には体力が落ち冬にはがんが転移し家族の介護むなしく3月6日に旅立ってしまった。

もう一人は、対照的に突然逝ってしまった。サックス吹きのこの男は糖尿病で入院してはいたが元気にしていると聞いていた。ある日の朝食時にちょっと不調を訴えた。昼食時は特に問題なく過ごしていたが夕食時に体調が悪くなり、夜救急車で病院に運ばれた。奥さんが病院に駆けつけた時にはすでに意識がなかったという。医師の診断書によると心不全で11時48分逝去。あっという間の突然死だった。

一年以上闘病しての旅立ちもあればその日のうちの旅立ちもある。自分で選べるものではないのだろうが願わくばピンピンコロリでありたいものだ。両君のご冥福を心からお祈りします。 合掌